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Rosalyn Tureck
Simone Dinnerstein, Invention1, 13, 10
Marcin Dąbrowski
Paul Barton
Cory Hall
楽曲分析[1]
「Inventio 着想」はそれ以外の素材を加えないで、どう展開されるべきかの無類の好例である。つまりモティーフaが対位句bを生み、その二つがはじめの2小節のうちに、完結した主題にまとまるのである。それ以後がどのように労作されるか、それは次の表がしめしてくれよう。
明確な3部形式(6+8+8小節)である。 T.3、11、19にみられる8分音符の動きはbの変形とも、aのはじめの4音符の拡大ともとれる。
『バッハのクラヴィーア作品』ヘルマン・ケラー著(音楽之友社)より
調性
第1部 <1- 6> 主調 - 属調(提示2小節+経過4小節)
第2部 <7-14> 主調 - II度調 - 平行調(提示2小節+経過6小節)
第3部 <15-22> 平行調 - 下属調 - 主調(移行+提示+終結)
第1部 <1- 6> I - V(C - G)
第2部 <7-14> V - I - II - VI(G - C - d - a)
第3部 <15-22> VI - II - I - IV - I - IV - I(a - d - C - F - C - F - C)
<>:小節番号 ローマ数字:調性 アルファベット:英語表記
ハ長調の調関係
I 主調 C: ハ長調(なし)
II 下属調の平行調 d:ニ短調(B♭)
IV 下属調 F:ヘ長調(B♭)
V 属調 G:ト長調(F♯)
VI 平行調 a:イ短調(なし)
( ):調号
用語
反復進行:同じモチーフが連続・繰り返すこと。英:シークエンス、独:ゼクエンツ。
反行形:テーマが鏡に映ったような形。
拡大形:テーマの音符の長さが2倍・3倍・4倍などに拡大された形。
縮小形:テーマの音符の長さが短く縮小された形。
転回:上声部と下声部を入れ替えること。
練習のポイント[2]
インヴェンション第1番は、対位法の思考と演奏を学ぶ過程の第1段階に相当する曲です。
対位法の思考とは、何でしょうか?
ロザリン・テューレックは、 対位法の思考として、下記の3つをあげています。
- 2声またはそれ以上の声部を同時にとらえるスキル。
- 各声部を移動するモチーフを観察するスキル。
- 各声部の関係に心を配るスキル。
これら3つは、対位法の思考の基礎となるものです。難易度の高い曲を弾くには、もっと多くのスキルが必要ですが、まずは基本をしっかり身につけたいです。
対位法の演奏とは、各声部の線を和音のかたまりとしてではなく、それぞれ独立した線として弾く技術。対位法の思考、指の独立、左右の手の独立(音・リズム)を必要とします。
練習では、右手のパートを左手で、左手のパートを右手で弾くというように左右を転回して弾くことが有用です。
参考資料
[1]「バッハのクラビーア作品」ヘルマン・ケラー著 音楽之友社
[2]「バッハ演奏の手引き」ロザリン・テューレック著 角倉一郎訳より改変